労基が診断書を誤読して後遺障害の等級が低かった事例

(事故内容と障害内容)

40代男性の方が、工場内で同僚が運転するフォークリフトに足を轢かれて右第2第5中足骨骨折になりました。
診断書の可動域制限は以下のような記載でした。

部位 種類範囲 前屈 底屈
母指MTP 0 0
80 45
2-5趾MTP 0 0
80 45

依頼者の方は、拇趾以外にも右の2,3,4,5足指すべてについて可動域制限があるそうです。
医師は、「2-5趾」という表記について2,3,4,5全部の足指の可動域制限であるというつもりで記載したそうですが、これがのちに誤解を生じたのです。

(ご依頼の経緯)

ご依頼者様は、当初、ご自身で障害補償給付申請を行いました。
そして、会社に対して損害賠償請求ができないかとご相談に来られました。
労基から後遺障害の資料を集めて、さらに、依頼者の方から詳しくお話をお伺いしていると、
依頼者の方は右2,3,4,5足指の全部に可動域制限が生じているにもかかわらず、
労基の資料を見ると、「1足の第1の足指を含み、2以上の足指の用を廃したもの」として11級の8の認定しか受けていませんでした。
労基は、拇趾と第2と第5の3本の足指しか可動域制限がないと勘違いして、
第3と第4の足指の可動域制限について見逃してしまったのです。

(弁護活動)

労災申請の支給決定、不支給決定については審査請求ができますが、その期限は通知を受け取ってから3カ月です。
ところが、依頼者の方は、後遺障害の通知を受け取って4か月後に初めて当事務所にご相談に来られたため、既に審査請求ができる期限は過ぎていました。

どうしたものかと悩みましたが、そもそも「第3と第4の足指」について労基が支給するとも不支給とも決定がなされていないので、そもそも後遺障害の申請をしていない状態であると考えました。

そこで、今度は、医師に分かりやすく可動域の部位に「第2,3,4,5趾MTP」と書いてもらい、さらに、労基に対して『以前の診断書の関節運動範囲には、「2-5足趾MTP」と書かれています。
主治医は、「2-5」つまり、第2,3,4,5のすべての足趾のMTPを記載していたのですが、貴署は、これを「第2と第5のMTP」のみ可動域制限があると解釈し、11級の8の認定をしました。
しかし、実際は、3,4の足趾の可動域制限も残存しています。

そのため、今回、改めて主治医に診断書を作成してもらいましたので、第3,4の足趾の可動域制限について、障害認定をお願いします。』という書面を添えて改めて障害補償給付申請をしました。

(結果)

新しい診断書を提出した結果、無事に第3と第4の足指の可動域制限も認めれられ、
「1足の足指の全部の用を廃したもの」として第9級の11が認定されました。
後遺障害が2級も違えば損害額も大きく異なりますので、適切な等級認定を受けることはとても大切です。

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