労災の後遺障害とは?その手続きと重要性を解説!

この記事のまとめ

・労災の後遺障害とは?

・認定を受けるための準備が最重要

・等級が違うと補償額や損害賠償額が違ってくる

1:労災における後遺障害とは?

労災で怪我や病気になって、治療を続けたものの、完全には元通りに戻らずに何らかの痛みや可動域制限などの障害が残った場合、医師から症状固定と言われます。
症状固定とは、これ以上治療をしても改善が見込まれない状態のことです。

労災では症状固定のことを「治ゆ」と言います。
治っていないのに「治ゆ」という表現はおかしいと思いますが、労災書式の診断書に「治ゆ年月日」と記載されていて、
これは症状固定日のことを指します。

症状固定になった後は、医師に労災書式の診断書を書いてもらい、労働基準監督署に請求書等と共に提出して、
後遺障害の認定を受けることになります。これを労災では障害給付支給請求といいます。

後遺障害は1級から14級まであります。
1級が一番重くて14級が一番軽い後遺障害です。
どのような後遺障害が何級に該当するかということは症状ごとに詳しく法令で定められています。

後遺障害が認定されると、1級から7級までは年金が、8級から14級は一時金が支給されます。
年金は原則としてずっと支給されますが、一時金の支給は一回だけです。その他にも障害特別一時金等の支給があります。

2:後遺障害が残ると言われたら準備をしっかりと

医師から後遺障害が残るかもと言われたら、症状固定に向けて準備を始めます。
傷病名と現在の症状・状態から見込まれる後遺障害の等級を想定し、その認定を受けるために必要な検査等をしていきます。

一番重要なのは、「診断書(障害(補償)等給付請求用)」の作成です。
業務災害では様式第10号、通勤災害では様式第16号の7になります。
この診断書は、労働基準監督署か会社から入手します。
当事務所にも置いていますので、当事務所にお越しいただいた方にはお渡しすることができます。

症状固定になった際に、この診断書を主治医に書いてもらいます。
主治医に診断書を渡すときが一番重要です。
なぜなら、一度書かれてしまった診断書は、たとえ間違っている内容であったとしても、医師によっては加筆修正に応じてくれない方もいるからです。

医師は、治療の専門家ですが、後遺障害認定の専門家ではございません。
診断書に書いてもらう傷病名、症状(痛みやしびれ)、必要な検査結果、可動域について、被災者側から医師に伝えなければ、漏れが生じて適正な後遺障害等級の認定が受けられないことがあります。
被災者の後遺症が正しく認定されるためには、診断書の作成が一番重要です。

当事務所でも診断書の確認、アドバイスを行い、適切な後遺障害等級が認定されたサポート事例がございますので
あわせてお読みください。

3:後遺障害等級認定の流れ

労災で後遺障害の等級の認定を行うのは労働基準監督署です。
診断書や日常生活や仕事の上で不便なこと等を記載する「自己申立書」などを作成したら、
障害給付支給請求書等の書類と共に、労働基準監督署に提出します。

自己申立書は労基が作った書式のものを使います。
通常、申請書類一式は会社が労基に提出してくれますので、被災者側で用意するものは診断書と自己申立書がメインです。他にも同意書等を書く必要がありますがそちらの作成は簡単ですので詳細は省きます。

もし、会社が労基に提出を拒んだ場合は、被災者自ら書類を揃えて労基に提出することになります。
申請書一式はお近くの労基で入手することが可能です(当事務所でご相談に来られた方にもお渡しすることができます)。

労災の後遺障害認定の場合、原則として労働基準監督署で医師等による面談があります。
歩行困難などの事情があれば、担当者が被災者のご自宅まで伺って面談をします。

必要書類を揃えて申請をしたら、1~2カ月くらいで労基から面談の連絡が来ます。
労基での面談では症状や可動域などを確認・測定します。
面談後、1カ月半くらいで結果が出ます。

結果はハガキで送られてきますが、ハガキの到達よりも年金または一時金の入金の方が少し早いので、
いきなり入金があってそれで結果が出たことを知る方もいらっしゃいます。

4:等級が違うと何が違うか

労災から受け取れる年金や一時金は、平均賃金と等級によって金額が異なってきます。
労災が決定した1日の平均賃金が8000円の方の場合、一時金の金額が次のようになります(特別支給金は除きます)。

14級 8000円×56日(給付日数)=44万8000円
13級 8000円×101日(給付日数)=80万8000円
12級 8000円×156日(給付日数)=124万8000円
11級 8000円×223日(給付日数)=178万4000円
10級 8000円×302日(給付日数)=241万6000円
9級 8000円×391日(給付日数)=312万8000円
8級 8000円×503日(給付日数)=402万4000円

被災者の方の平均賃金によって金額が変わりますが、このように、
1級上がるだけで数十万円から100万円近く金額が違ってきます。

会社に対する損害賠償請求においても、等級が1級違うと、
慰謝料や逸失利益等の合計損害額が数百万円違ってくることもあります。

このように、適切な後遺障害の等級を取ることはとても大切なのです。

当事務所でも診断書の確認、アドバイスを行い、適切な後遺障害等級が認定されたサポート事例がございますので
あわせてお読みください。

 

5:適切な後遺障害等級認定のために弁護士ができること

後遺障害認定のためには診断書が一番重要です。

弁護士にご依頼いただければ、傷病名と症状から見込まれる等級を想定し、
その等級の認定を受けるのに必要な項目を診断書に記載してもらうように具体的にアドバイスをします。
もし、診断書の記載内容に不備があれば、労基に出す前に医師に訂正をお願いしてもらいます。

当事務所でご相談いただいた方の中には以下のような訂正例があります。

健康な方の肩の可動域(外転)が150度と記載されていました。
被災者によると健康な方の肩はまっすぐ上まで上がるので180度に訂正してもらいました。
怪我をした方の可動域(外転)は120度でした。
肩の可動域制限は、健康な方の角度と怪我をした方の角度を比べて、2分の1しか曲がらなければ10級、
4分の3しか曲がらなければ12級ですが、もとの150度のままですと、可動域制限は認定されません。
健康な方の肩の可動域を訂正してもらい、無事に12級が認定されました。
後遺障害認定後のご相談のケースで、診断書に足指の可動域で「左第2足指・第5足指」と記載がありました。
医師は、左第2足指、左第3足指、左第足4指、左第5足指の4つの足指のつもりで記載したそうですが、
労基は第2足指と第5足指の2つの足指だけしか可動域制限がないと勘違いをして等級を認定しました。
当事務所へのご相談後、主治医に改めて診断書に「左第2足指、左第3足指、左第足4指、左第5足指」と明記してもらい、「左第3足指、左第足4指」の後遺障害を新たに申請して、無事に左2~5の全ての足指の可動域制限が認定されました。
手首の可動域制限があるにもかかわらず、診断書に記載がなかったので、医師に追加して記載してもらいました。
無事に手首の可動域制限が認定されました。
別の方で、腰椎圧迫骨折でも同じように胸腰部の可動域制限が記載されなかったこともありましたので訂正をしてもらいました。
後十字靭帯損傷で膝のぐらつきがある被災者の方について、ストレスレントゲンを撮影してもらい、
弁護士のアドバイスに基づいてサポーターの必要性を診断書に書いてもらいました。
自己申立書の記載内容も重要です。
痛みやしびれの程度や頻度、仕事に与える影響等について正確に記載する必要があります。
これは、等級認定でも重要ですが、会社に対する損害賠償請求をする際に、会社がこの自己申立書を見ることがあるので、
例えば、実は結構痛いのに強がって「たまに痛みがある」と書いてしまったら、
会社側から「痛みが大したことがないのでそこまでの金額を支払う必要はない」等の反論を受ける場合があります。

弁護士にご依頼いただければ、自己申立書の書き方もサポートさせていただきます。

労基の面談の際の注意点もサポートさせていただきます。

当事務所でも診断書の確認、アドバイスを行い、適切な後遺障害等級が認定されたサポート事例がございますので
あわせてお読みください。

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